小学生の頃、住んでいた家の近くに割と大きな公園があった。
そこは通っていた学校とも近かったので、就業後に遊ぶことも多く、
出店で駄菓子を買ったりカタ抜きをしたことを思い出す。
呑気な時代でカタ抜きの判定が今に思えば異常にシビアだったり、
ほんの少しの額ではあったけれどお釣りをごまかされたりもしていた。
子供相手にそんなインチキ臭い商売をしてもそれは日常のことだった。
公園は小学校と同じくらいの大きさで、周囲をゴーカートや自転車で廻れるようにと、
ちょっとした道路がこさえてあった。
もちろんゴーカートや自転車は公園でレンタルすることができた。
僕等はそこを交通公園と呼んでいた。
泥団子をぶつけ合ったり、団地の柵に座って夕方になるまで何も考えずにボンヤリしたり。
そうした遊びと同列に交通公園へ行くということが日常にあった。
映画や本の記憶が残る以前のことで、本当の子供だった頃の話だ。
しばらくすると交通公園の中にちょっとした異変が起こった。
路面電車が突然出現したのだ。公園常設の図書館のようなものだったのだろう、
当初はたくさんの文庫本や児童文学のハードカバーが置かれていた。
けれど皆、借りていってしまい返却などは考えたこともなかったから、本の数は見る間に減っていった。
しまいには薄汚れた文庫本が床に数冊散乱しているだけといった始末だった。
同時に電車は夜、不良たちの溜まり場になっていたようで
本の減少と反比例するように漫画雑誌が増えていった。
まだ漫画は大人の鑑賞に適しているとは多くの人が考えていなかった。
今の小学生のように週刊誌を定期購読するなんてことは珍しかったのだ。
周囲に行き交い蔓延する遊びに騒ぐ声は、薄汚い漫画雑誌を目にしたとたん止んでしまった。
僕は夢中になってページをめくり、ストーリーを追ったけれど、
続きが気になったわけでもなかった。
ただ、暑くてしょうがないはずだったのに漫画を見ている間は汗が引いていた。
そんなときに読んでいたと思われる作品を最近買った。